s=1/2(,1/4,1/8)は、ADSLの高速化に効果がある技術というより、ADSLの高速化を有効にするために必要な技術です。
ちまたでは、
s=1/2についてこういう説明が出回っているようです。
「リードソロモン符号のエラー訂正を『雑』にする代わりに従来よりも高い転送速度を得る手法」
この説明自体が完全に間違いと言うわけではありませんが、ふつうこう言われると、「エラー訂正のヘッダ
部分を減らして、データ本体を増やすことで高速化する」と理解すると思います。
(管理人もそうでした)しかし、その理解だと完全に間違いです。
こう考えるとわかりやすいのではないかと思います。
ADSLには(よほど大きくSNRを取らない限り)エラーがつきものであるため、必ずエラー訂正フレームというもの
を作って、受信側でエラー訂正可能な状態にしてから転送されます。ところが、8Mサービスで使われていたs=1という設定
だと、このエラー訂正フレームの生産能力が最大でも毎秒8Mビット=8Mbpsしか取れないのです。
そのため、G.dmt規格のADSL自体の転送速度はもっと高いのに、エラー訂正フレームの生産能力に足を
引っ張られる形で、システム全体として最大転送速度は8Mbpsということになっていました。
絵にすると、下のようなイメージです。

このエラー訂正フレームの生産能力を2倍(16Mbps)に引き上げるのがs=1/2技術です。これによって、G.dmt規格
ADSL本来の最大転送速度までシステム全体の速度を引き上げることが可能になります。
(G.dmt規格では、本当は下り13.3Mbpsくらいまでは可能なのですが)
上で、「リードソロモン符号のエラー訂正を『雑』にする」というのが完全には間違いではないというのは、
同じ時間に2倍のエラー訂正フレームを詰め込むわけですから、当然条件が悪くてエラーが発生したときに影響を
受けるフレームも増えるわけで、その意味ではエラー訂正を雑にすると言えなくもないためです。「s=1/2は、
条件がいい場合のみに使用される」というのも同じ理由です。

さて、察しのいい方はお気づきだと思いますが、当然ながら24Mや26MのADSLでは、s=1/2でも力不足です。
つまり、ADSL自体を26Mまで高速化しても、s=1/2のままだとトータルでは最大16Mbpsで頭打ちになってしまいます。

したがって、24MオーバーのADSL(詳しくは24MオーバーADSLを
ご参照ください)では、ADSL自体の高速化だけでなく、s=1/3やs=1/4の開発も同時に行わなくてはならないと
いうことになります。ただし、当然ながら、エラーの影響がs=1/2よりも大きくなりますので、さらに条件が
よい場合しか使えないということになります。
さらに30M、40Mを目指す場合には、s=1/6(エラー訂正フレームの最高速度48Mbps)とかs=1/8(同64Mbps)といった技術が
必要になっていきます。