エコーキャンセラは同時オーバーラップを実現できるため、ADSLの 高速化・長距離化の本命とも言える技術ですが、問題点のない技術なんてものがそうそうあるわけがなく、 下記のような問題があります。
他回線への干渉の問題
あんまり書くと3億円請求されちゃいますが、エコーキャンセラという技術が上下で同じ周波数に同時に信号を
流すことを前提にしている以上、その周波数帯には上り+下りで2倍のパワーが流れていることになります。
となれば当然、そこで発生している磁界の強さ=他回線への干渉も2倍になることになります。

したがって、エコーキャンセラありとなしで干渉がまったく一緒ということは理論的にありえません。
ただ、このエコーキャンセラを入れて強くなった干渉が他の回線にとって許容できる範囲なのかどうかと
いうのは別問題で、その辺が今後TTC等で議論されるのでしょう。
現実社会の厳しさ(笑)
電話回線が理想的なものであれば、どんな距離でもエコーキャンセラは理論どおりに引き算をして目的の
信号を取り出すことができます。しかし、現実の電話回線は、ブリッジタップ(注1)や宅内での分岐など
さまざまな問題を抱えています。
そのため、線路長が長くなった場合にエコーキャンセラが理論どおりに働かなくなる場合があります。
回線の途中にブリッジタップや宅内分岐がある場合、自分が送った信号がそこでごくわずかですが反射して 戻ってきます。

モデムの近くにブリッジタップがあり、そこで反射して戻ってくる上り成分が0.01%くらいと仮定します。 すると、モデム側のエコーキャンセラの動作は
A(もともとの上り)
+B(もともとの下り)
+0.0001A(ブリッジタップで反射してきた上り成分)
−A(エコーキャンセラで取り除く上り成分)
となるために、答えが「B」ではなくて「B+0.0001A」となります。
近距離で「B」が強い信号であれば無視できるのですが、距離が長くなってくると上の式の「B」が非常に
小さくなってきます。そうなると、だんだんと「0.0001A」というノイズが大きなものとして効いてくる
ことになり、エラーが発生するようになります。(注2)
ACCA 12Mが長距離になるとDBMやFBMsOLというエコーキャンセラを使わない技術に切替えているのは、
こういう現実世界の問題を考慮してのことと考えられます。
「YBB 12Mはエコキャンでどんな環境でも100%フルオーバーラップだから、速度も距離も最強」という
掲示板の書き込みを時々見かけますが、ブリッジタップを全部外し、なおかつ収容替えをして近傍に
ISDNがまったくない理想の回線なら確かにそのとおりです。でも、現実の世界では必ずしもそうではないって
ことですな。
んで、ブリッジタップ完全撤去+収容替えで理想の回線を作る金があったら、Bフレッツか有線ブロード
で光が引けちゃいます(笑)
注1:電話回線の途中に、将来の増設に備えて設置されている分岐のこと。ADSL自体にも速度低下などの
影響を及ぼします。
注2:周波数分割や時分割ではこういう問題は発生しません。周波数分割の場合、いくら回りこんで戻って
来る成分があっても、それは上りの周波数帯の成分なのですべてフィルタで取り除かれます。時分割の場合は
相手が送信している間は自分は送信しないので、そもそも回りこみ成分がありません。