エコーキャンセラは、直接ADSLの高速化や長距離化に効果があるというより、オーバーラップをすべての
条件で使えるようにするために必要になるものです。
下りデータと上りデータを同時に同じ周波数帯を使って流し、受信側でそれぞれのデータを分離して
取り出す技術で、高速化・長距離化のために低い周波数帯も使って下りデータを流すためには必須の
技術といえます。
実際にエコーキャンセラがどのような動作をしているかをご説明するには、まず電話線に上りデータと 下りデータが同時に流れるというのがどういうことか、からご説明するのが結局は早いと思います。
上りデータと下りデータを同時に流すとは
上りと下りのデータを同時に流すとどういうことになるでしょうか。電話線は1つのループした回路ですから、
その上で複数の発信器が信号を流すと、それらの信号をすべて足し合わせた電気信号が回路の上を流れる
ことになります。
つまり、DSLAM側とモデム側で同時に信号を出すと、その信号は電話線の上で一つに混ざってしまうのです。
図で示すとこのようになります。

このままでは受信器はこの混ざった信号を受け取るので、読み取ることができません。したがって、何らかの
方法で混ざった信号を分離する必要があります。
上りと下りの信号を分離する方法は、3通り考えられます。
時分割(ReachDSL、FBMオーバーラップ、糸電話方式)
一番簡単なのは、時間帯で分ける方法です。
「時分割」というと難しそうですが、早い話が糸電話方式で、自分がしゃべっている間は相手が黙る、
相手がしゃべっている間は自分が黙るということです。ただ、一方的に片方がしゃべってしまうといつまで
たっても相手方がしゃべれないということになる(糸電話ではありがちなことですが(笑))ので、時間を
決めて、最初はDSLAMさんがしゃべってモデムは聞く方に回り、一定時間が経ったら今度はモデムがしゃべって
DSLAMは聞く方に回るという作業を繰り返します。
周波数分割(各社1.5M・8M ADSL、eAccess 12M、フレッツ・モア方式)
次に、周波数で分ける方法があります。
下図のとおり、混ざってしまっても見分けがつくようにそれぞれ周波数が違う音を使う(図では、周波数の違いを
色の違いで表現しています)ことで、同時に両方でデータを出しても、フィルタを使って信号を分離して受信器が
読み取ることができるようにします。
エコーキャンセラ(YBB 12M、ACCA 12M、電話方式)
最後に、エコーキャンセラです。
エコーキャンセラそのものは、通常の電話でも使われているくらいでそれほど新しい技術ではありません。
下図を参照してください。モデムとDSLAMが同じ周波数を使って信号(モデム:「のぼり」、DSLAM:「くだり」)
を流したとします。すると当然、電話線の上では両方が混ざった信号(「のぼり+くだり」)が流れます。
このとき、モデム側では、自分の発信器が出した信号(のぼり)を教えてもらって、電話線を流れている混ざった
信号(のぼり+くだり)から引き算すれば、DSLAMが発信した信号(くだり)を取り出すことができるはずです。
要するに、「(A+B)-A=B」という、単純な引き算によって相手の送信した信号を取り出すのがエコーキャンセラの
原理です。
原理は単純ですが、電話のエコーキャンセラでは多少引き算に失敗しても雑音が入る程度なのに対して、ADSLでは
ちょっとでも引き算に失敗してノイズが入ると大きなデータエラーにつながるため、非常に精密に引き算をする
必要があり、実際に導入するのは難しい技術です。